技法書の練習としてアニメキャラを模写する試み、第2回目になります。今回の題材は前回も描いた『鬼滅の刃』の1枚絵。著作権対策として、同じイラストをサムネに使っているAmazonの商品リンクを貼っておきましたが、「鬼滅の刃」で画像検索すれば出てくるはずです。
ここで言う模写とは、そっくりそのままコピー(複写)することではなく、観察と分析を通して自分で組み立て直すこと。技法書の練習として模写をするときに重要なのは、出来上がった結果(最終的な輪郭線)をコピーすることではなく、思考と作画の過程を分析して最初から再現してみることです。
お断りを1つ。私の描いた冒頭の絵について、細かい間違いを指摘し始めるとキリがないと思います。ただ、あくまでも〝漫画アニメのキャラを題材にして技法書の基本手順を練習する〟様子を知ってもらうことが目的なので、細かいツッコミはなしでお願いします。
前回も書いたように、私の人体ドローイングの基本手順は「ビルプ本」「ハンプトン本」がベースになっていますが、他に「マテジ本」「たてなか本」などの影響も受けているため、自分なりのアレンジが加わっています。もっと詳しい解説が知りたい場合は、それぞれの技法書を参照して下さい。
技法書としては「ビルプ本」「ハンプトン本」「たてなか本」の3冊を使うことを想定しているので、今回ザックリ模写するのは頭部だけで、身体は裸の状態で止めてあります。衣服の描き方については他の技法書などにあたって下さい。1つだけ言うとすれば、襟・裾・ベルト・帯などの傾きは、その下にある身体部位の傾きに一致させるべし。
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作画工程はいつも通り「ジェスチャー、フォーム、アナトミー」の順番。
「ジェスチャー」...人体をパーツの集合体と見なしてポーズやアクションを捉えた後、各パーツの〝向きと傾き〟を明示。
「フォーム」...各パーツをその〝向きと傾き〟に注意しながら、球やボックスなどの単純な立体図形に変換します。
「アナトミー」...球やボックスにランドマーク(骨の出っ張りなどの目印)を付けてから、筋肉の配置を特定していきます。
ジェスチャーの工程は「ビルプ本」「たてなか本」の折衷方式。「たてなか本」では頭部・胸郭・骨盤をD字に変換する工程がありますが、私は無視しても良いと思います。「たてなか本」でD字に変換する目的は向きと傾きを明示することだけなので、それさえクリアできていれば、D字に変換する必要はありません。
フォームの工程では球・ボックス・円柱を使いましたが、余裕があれば全パーツをボックスに変換すると良い練習になります。また、前腕を板状にしているのは、この方が手との繋がりが分かりやすいと思ったからです。その他フォームの工程に関しては「ビルプ本」「ハンプトン本」に詳しい解説があります。
アナトミーについては、私自身まだまだ知識不足なので、あまり大きなことは言えませんが、経験的に「ハンプトン本」がおすすめですかね。画像ではランドマークを付けるのを忘れていますが、ランドマークについても「ビルプ本」「ハンプトン本」に解説があります。
頭部については土台を作る作業から始めます。重要なのは頭部の向きと傾きを明確にして、それに沿って各パーツを配置する場所を特定すること。これは、デフォルメされた漫画アニメのキャラでも同じ。輪郭線を決めるのは最後です。頭部の描き方については「ハンプトン本」に詳しい解説があります(ちなみに「ルーミス本」がベースになっています)。
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最後に、題材の1枚絵についての雑感を少し。
右から、炭治郎・禰󠄀豆子・善逸・伊之助の順番で並んでいますが、まるで「腰の刀に手をかけて、引き抜いて、振りかざす」という一連の動作を連続撮影したように見えます。各キャラの右腕だけに注目するとそういう動きになっていますし、身体の向きも画面の右側から左側へとクルリと回転しています。さらに、脚を見ると重心の移動が同じく左足から右足へと移っています。
また、禰󠄀豆子だけ頭部の傾きが違っていますね。これは、アクセント的な意味もあるのでしょうが、1人だけ異質な存在だという感じを出すためかもしれません。あと気になったのは、まるで頭部の並びがメロディーを、足の並びがベースを表現しているようで、全体的にリズムが感じられることでしょうか。