足長クジラの落書き帳

drawings by long-legged whale

技法書の基本手順で漫画アニメのキャラをザックリ模写 #01

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〈漫画キャラなどの模写でも「ジェスチャー(骨組み)、フォーム(肉付け)、ディテール(仕上げ)」という基本手順を守ること。いきなり輪郭線を取っても、人体を描く練習にならないから、ダメ。〉

〈技法書で学んだことは「技法書以外の練習」で使わないと身に付かないので(経験者談)、例えば、好きな絵の模写をする時に技法書などで学んだ手順を当てはめて描いてみるとか、いい練習になるかもしれません。〉

 

 これはTwitterの画像に添えたコメントと、過去記事にいただいたコメントへの返信。私自身は、漫画やアニメのキャラクターを模写することはほとんどないのですが、有言不実行のままでは無責任なので、実際に技法書の手順を使ってザックリ模写してみることにしました。

 Google検索などを通してこのブログに辿り着いてしまうような人たちが興味を持っているのは、技法書関連記事といった役立ちそうな情報なのだと思います。そして、そういう人たちにとってはこういった記事の方が参考になるのでは?と思ったわけです。

 模写をする時は目的を明確にしておく必要があります。今回の目的は技法書の基本手順を使った練習の一端を見せること。そして、漫画やアニメのキャラクターを模写する時も、観察と分析が重要だということを知ってもらうことです。

 

 技法書への取り組み方としては「解説を読んで作例を模写する」のが一般的だと思います。ただし、この「解説を読んで作例を模写する」というのは、あくまでも解説されている手法を理解する段階なので、その後、その手法を身につけるために「その手法を使って練習する」必要があります。

 技法書は一通りこなしたのに人体の描き方が分からないという人は、手法が解説されていることに気付いていない、解説されている手法が理解できていない、あるいはその手法を使った練習をしていない、のどれかだと思います。

 私の場合、人体ドローイングの基本手順は「ビルプ本」「ハンプトン本」が土台になっていますが、これまで何度も繰り返し述べてきたように、人体の描き方を解説した技法書はどれも基本的に同じことをやっていて、この2冊が特別というわけでありません。

 

〈紙は2次元の画材です。このため、たいがいは2次元で描く方法を教わります。「2次元の紙面に3次元のフォームを描くのだ」という考えは浮かばないものですが、実際には、それこそがまさしく、現実を現実的に描くために必要なことです。紙の上で彫刻するようなものです。〉(「ビルプ本」)

〈本書では一貫してすべての目的の出発点となるフレームワークとして、「ジェスチャードローイング」を位置づけている。「ジェスチャー」とは、彫刻の骨組み、または3Dアニメーションや3Dモデルのリグと同じものだとも言える。〉(「ハンプトン本」)

 

 ここでいう「彫刻」とは、石や木を彫って像を作ること(彫像)ではなく、粘土を盛って像を作ること(塑像)です。つまり、「ポーズやアクションを想定して針金などで骨組みを作り(ジェスチャー)、各部分に適切な量の粘土を盛って(フォーム)、細かく形を整えていく(ディテール)」ということです。

 ザックリした私の描き方でそういう感じが少しでも伝わればいいのですが...。題材は『かげきしょうじょ!!』『鬼滅の刃』『小林さんちのメイドラゴンS』『呪術廻戦』。どれもインターネットで検索して適当に拾ってきた画像です。

 

 全身。基本手順に沿って描いていきます。間違ってもいきなり輪郭線を取ろうとしないこと。外側からではなく内側からが原則です。この基本手順はそのまま思考過程であり優先順位なので、順序を守らないと意味がありません。

 基本手順に沿った練習を繰り返すことでこの思考過程(見方・考え方)に慣れてくれば、自分の描きやすい手順に変えていけばいいと思います。

 頭部。全身を描く時と同じように、頭部を描く時もパース(方向・傾き)や比率を意識します。頭部の模写で何となくおかしいと感じる場合は、たいてい各パーツの配置が微妙にずれています。そういう時は、土台から見直すのが吉。

 頭部の描き方については「ハンプトン本」が「ルーミス本」の手法をベースに詳述しているので、それを適用します。リアル寄りならば基本的に「髪の生え際、眉間、鼻の下端、顎の先」で等分ですが、デフォルメ強めな場合は、その頭部を分析して各パーツの配置を比率で割り出す必要があります。

 衣服。衣服は筒状の布がつながったものなので、まずは裾が奥・手前どちらの方向に傾いているか(パース)に注意して円筒(単純な図形)だけで描き、その後で裾の形状を直したりシワを描き込んだりして細部の形を整えていきます。

 

 上段3枚目でアナトミーの分析をしているのは、「スカートが空気をはらんでフワッと膨らんでいるため、臀から脚へのラインがよく分からない」「左前腕は外転している(掌が上を向いている)のに、左袖のシワは内転しているように見える」など、気になった箇所を確認するためです。

 まあ、描き手がどういう効果を狙っているかにもよりますし、私自身たいして上手く描けるわけでもないので、あまり偉そうなことは言えないのですが、スカートのプリーツにしろ衣服のシワにしろ、姿勢や動きを示唆するように描く方がいいと思います。