足長クジラの落書き帳

drawings by long-legged whale

私の使った「アナトミー解説書」と練習方法

 実は、先月から『モルフォ』の全模写に取りかかっていたのですが、今月半ばでそれがようやく終わりました。ちょうどキリがいいので、私がアナトミーを独学するために取り組んだ解説書や練習方法について、ここであらためて振り返ってみようと思います。

18/07/05- 18/11/27

M・ハンプトン『マイケル・ハンプトンの人体の描き方』

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 本書はあくまでも人体ドローイングの技法書ですが、ある程度まとまったアナトミーの知識が身に付き、人体の見方(捉え方)が分かったという意味で、私にとってのアナトミー関連本1冊目と言えると思います。

〈本書の最終的な目標は、人体の描き方を説明することではない。人体というモチーフを利用して、立体形状を描き出す原則を使いこなす訓練を積むことだ。〉

〈この本は、解剖学の参考書ではない。ドローイング工程の基盤として、ざっくりと簡略化した身体構造を理解することが目的だ。〉

 半分以上のページがアナトミーの解説にあてられていて、図版では、人体の全身あるいは各部位が、単純な立体形状にデフォルメされた骨・筋肉の集合体として、描かれています。複雑な人体も細分化・単純化することで理解しやすくなります。

19/05/29 - 19/06/29

M・マテジ『アナトミーとフォース』

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 アナトミーを独学するにあたり、書店に並んでいた解説書をあれこれ比較した結果、評価の高い(そしてお値段も高い)『スカルプターのための美術解剖学』『ソッカの美術解剖学ノート』を差し置いて、最終的に教科書として選んだのがこの本でした。

 私がアナトミーを独学しようと思ったのは、骨格や筋肉のことを知りたかったからではなく、それが人体ドローイングに役立つと思ったからですが、『スカルプターの〜』にしろ『ソッカの〜』にしろ、アナトミーの知識を人体ドローイングにどう生かすか?まで踏み込んでいるようには思えなかったんですよね。

 アナトミーの解説書はいろいろありますが、アナトミー関連の情報に限って言えば、解説の内容に大差ないと思います。どれも同じ人体を扱っているので、当然と言えば当然の話で、違いは主に図版の視覚的な分かりやすさですかね。あとは、必ずしも必要のない余分な情報の量といったところでしょうか。

 本書はM・マテジの『リズムとフォース』の続編で、「フォースドローイング」シリーズの2冊目。アナトミーと同時に、人体ドローイングにおける「フォース(力の流れ)」について解説しています。『リズムとフォース』で知った「フォース」について、もっと明確に理解しておきたかった私にとっては、文字通り「渡りに船」な1冊でした。 

 全部で300ページ近くありパッと見かなりのボリュームですが、1ページにつき図版1枚なので思ったよりもサクサクと進められますし、独学用の教科書として取り組みやすい構成になっていると思います。

 全身を7部位に分けて、前後側の3面から解説、つまり全部で21項目。最初に各筋肉の名称や機能などの要点をまとめた図版がありますが、無駄に詳しい解説書よりも見やすいです。また、各項目の最後には、アナトミーの知識を人体ドローイングに生かすための「練習とヒント」もあります。

 本書に取り組んだことで、アナトミーについての知識以外にも、「ハンプトン本」でジェスチャーと言われていたものが本書ではフォースとして説明されており、両者は(全く同じというわけではないにしろ)本質的には同じものだと理解できました。

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V・L・ウィンスロウ『アーティストのための美術解剖学

  これは参考書として購入した1冊。主に、筋肉が骨に付着している部位(起始・停止部位)を確認するために使いました。情報が多すぎると言われることもある本書ですが、実際はそんなことありませんね。解説文はたしかにやや冗長ですが、内容自体はほぼ必要な情報のみといった感じです。

 また、各部位の解説の後にある「構造と表面の形状」と第八章「全身」が、ジェスチャーやフォームやリズムやプロポーションなど、アナトミーというよりも人体ドローイングに直接つながる内容になっていて、本書を参考書として選んだ理由の1つだったりします。

19/07/31 - 19/11/17

『新ポーズカタログ2 男性の基本ポーズ編』 

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 アナトミーの知識を確認するための練習問題として使いました。練習方法は、普通にポーズ集を模写した後、まずはランドマークを描き込み、さらに筋肉を描き込む。よく分からない部位については、手持ちの解説書を総動員して調べる。

 150体ほど集中的にこなしたところで止めましたが、アナトミーの勉強方法としてはこれが一番効果があったと思います。まあ別にポーズ集でなくてもいいんですけど…。

 あとは、日々のクロッキーやスケッチで気になった部位があれば、面倒臭がらずにそのつど解説書で確認すること。要するに、どんな知識も実際に使わないと身に付かないということですね。

20/10/28- 20/11/12

M・ローリセラ『モルフォ 人体デッサン』 

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  美術解剖図のデッサン集です。もともとは、解説書だけでは図版不足かもしれないと思い、そのあたりを補う目的で買ったもの。結局、ほとんど使わないまま、ずっと放置していたのですが、せっかくだから使っておこうと、先月から模写を始めて今月ようやく全模写が終了。

 良くも悪くもただのデッサン集ですが、いろいろなポーズをいろいろな角度から描いたデッサンが数多く収録されているので、アナトミーの知識を再確認するにはちょうど良かったと思います。

 最後に、アナトミーを独学するにあたって最重要だと思うことを1つ。それは「解説書の記述や図版だけを頼りに、脳内or紙上でイメージをこねくり回して、問題を解決しようとしない」ということです。

 よく分からない時は、できるだけ(自分も含めて)実際の身体を使って確認してみること。筋トレなど無縁のごく普通の身体でも、軽く力を入れてみるだけで筋肉が見えますし、手で触ってみればもっとよく分かります。

 とまあ、私が取り組んだアナトミーの解説書と練習方法はこんな感じですね。ではでは…。